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第22話 『ビギタリアダンジョン』2

Auteur: 米糠
last update Dernière mise à jour: 2026-01-06 07:04:21

 洞窟に一歩踏み入れると、外の光はあっという間に遠ざかり、周囲は薄暗く湿った空気に包まれた。石の壁はじっとりと水気を帯び、そこから滴る水滴が「ぽたり」と一定のリズムで落ちては、小さな音を反響させる。足元に転がる小石を踏むたび、硬質な音がいやに響き、五人はそれぞれ無言で背筋を伸ばした。

「……空気が冷たいな」

 セリウスは荷物の肩紐を握り、耳を澄ましながら慎重に足を進める。洞窟内特有のひんやりとした風が頬をかすめ、そのたびに胸の奥で不安が小さく膨らんでいった。

「初めてだから慎重にね。無理に先へ進まなくていい」

 アランが前方を見据えたまま低く告げる。その横顔は冷静に見えるが、握った剣の柄にはわずかに力がこもっている。

 やがて通路は左右に枝分かれし、迷路のように入り組んだ姿を現した。そのとき――遠くで、不規則な羽音がかすかに響く。最初は耳鳴りのように思えたが、やがてそれは確かな群れの気配へと変わっていく。

「……あれは……?」

 レオンが顔を上げ、暗がりを凝視する。目を凝らすと、揺れる影が岩壁に映り、ばさり、ばさりと羽ばたきが近づいてきた。

「戦闘か? ……まずは様子見だな」

 オルフェが大剣を肩に担ぎ、筋肉を軋ませながら腕を鳴らす。その瞳には戦意が灯っていた。

 リディアは素早くポーチから小瓶を取り出す。中の粉末が光を受けてきらりと反射した。

「火の粉、準備オッケー! 狙いを外させてやる!」

 次の瞬間、黒い影が一斉に襲いかかってきた。小型のコウモリの群れだ。鋭い牙を剥き、乱れ飛ぶ羽音で耳を狂わせながら、一行を混乱させようと舞い降りる。

「くっ……!」

 アランは長剣を構え、正面から切り払った。羽が舞い散るが、暗闇と耳障りな羽音に視界も感覚も乱される。斬っても斬っても影が押し寄せ、額に冷や汗がにじんだ。

「アラン、大丈夫?」

 セリウスが後方から声を投げる。

「……少し手こずってる!」

 アランは必死に応えるが、剣筋は次第に荒くなり、いつもの冷静さは影を潜めていた。焦りを隠そうとするその姿に、セリウスの胸がざわつく。

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